第86回: 保育の片隅から「こども達の喧嘩で日々思う事。」

こどものいえ保育園 園長 畑田温子
イラスト:子どもの喧嘩

「おおー今日も派手に頑張ってるなぁ」

今日も今日とて朝っぱらから玩具の取り合いによるこども達の仁義なき戦いが、こどものいえ保育園で繰り広げられています。

「貸してよ!」
「だめ!だって今使ったばっかりだから」
「今じゃないだろ!ずっと使ってたよ」
「いや!使ってないから!貸さないよ」

ポカリ!とうとう頭を軽く殴られてしまいました。

うぇーんと言う泣き声が聞こえたと同時に私に抱きついた4歳の男の子。赤ちゃんだった頃を思い出して思わずよしよし。可愛いなぁ。

ひとしきり、わんわん泣いたらケロリとして何事もなかったかのように、お絵かきをして遊び、喧嘩していたはずの男の子とも仲良く遊び始めました。

このような喧嘩が日常茶飯事の保育園。喧嘩の原因の8割が物の取り合い、奪い合いです。

突然喧嘩が始まり自然と何事もなかったかのように仲直りをするのです。

少人数で赤ちゃんの頃から兄妹のように育ったからなのかもしれませんが、私はこれが本当にうらやましいのです。

「君たちさ、大人になったら、喧嘩は本当に複雑で大変になるんだよ、、一度喧嘩したらどんなに仲良い友達でもギクシャクしちゃうから用心に用心を重ねてね。どうしても我慢できない時は陰で愚痴っちゃうようになるから。そうならないように今たくさん喧嘩しなさいね。」

と心で呟き、今日もあちこちで繰り広げられる喧嘩を見守る私です。

喧嘩がうまくできない世代、お友達にうまく気持ちが伝わらないと無になっただの、心が砕けただの、詰んだのと言う不思議な日本語を今の若者は使います。

それだけ繊細で人一倍優しい世代だとは思いますが、たまには小さな頃に戻って腹一杯喧嘩してもいいのではないかい?

信頼できる友達ならきっと受け止めてくれるはずだよ。
と思いつつ、実は私が不覚にもその勇気がなかったりするのです。

こども達のピュアな喧嘩が羨ましい小心者の呟きでした。